出梁と出桁で庇が長く出し、雪深い旅人への配慮をした町並み

  中山道の宿場町 奈良井宿

        奈良井宿のスケッチ画:ますだ ふみお
  • 交 通  車・長野道・塩尻インター国道19号線経由約30分   
    JR・中央線、奈良井下車徒歩5分                       
    所在地  長野県塩尻市奈良井

        奈良井宿1 奈良井宿2 奈良井宿3 
    奈良井宿4 奈良井宿6    
    奈良井宿5 奈良井宿7

    まちの生い立ちと特徴 

  • 奈良井宿は中山道67宿の1つで、木曽川支流、奈良井川に沿って標高930mから950mの木曽の山々には挟まれた谷筋にあります。ここは、江戸時代からの宿場町がそのまま残っています。
    奈良井宿は、屋根のがリズミカルに変化し、深い庇を有する集落です。軒の出、軒高、妻壁が実に不揃いで、それでいて素材や屋根勾配、建築工法等に一定のルールあるためかまとまりがあり、楽しさや活気を感じさせる、つまり個性的で統一感のある町なみとなっているのです。山すそから奈良井川まで幅100~150mの可住地域に、中央に自然地形に沿ったみちを一本通し、その両側に宿場が並んでいます。JR奈良井駅を起点に、みちはゆっくりとS字カーブを描きながら登り続けます。つまり、三次元曲線のみちの両側に奈良井宿はあります。地形に素直にみちを造り、みちに素直に家を造ると、各敷地高さは少しづつ異なり、前面の壁面線も少しづつずれて、リズミカルな町なみとなります。断面2断面図
    さらに、雪深い土地柄、旅人の雪避けのためか庇が深く、深くするため袖壁を延ばしたり、出梁を設けているので、町なみの表情は多彩になっています。しかし形態はそれぞれ変化していても、建築の様式やディテールに於いて共通していますので、美しい町並みと評価されています。
    まちは川下より下町、中町、上町に三区分されいてますが、生活上、地形上は8つの区分と見るべきでしょう。中央の中小道を背骨とすれば、あばら骨のように、それに直交する露地が主要なもので8本あります。宿場内には山の中腹から、奈良井川を見下ろす場所に専念寺、法然寺、神明宮、若宮社等9つの寺社があり、宿場の延長は、水平距離で約100m毎に(歩行距離では、109m=1丁毎となる)寺社や水場があり文節化された空間構成となっています。これは日頃のコミュニティ活動や防災、避難活動に好都合であったことでしょう。

    まちなみの図
    奈良井宿のもう一つの特徴は水場です。中山道とあばら骨のような8つの露地の交点には、それぞれ上屋を有する水場と、その周囲に共有地の広場を設けています。旅人の喉をうるおし、又、人や馬の足や体を洗ったことでしょう。建物の特徴に、猿頭(さるがしら)があります。雪国ではがん木を設けたり、庇を深くして歩行者に便宜を図っている場合が多いが屋根の庇を深くすると小庇が必要となります。この小庇の化粧垂木が猿頭です。猿頭は、直線で構成されるまちなみの中で、先端の曲線がやわらかい表情を与えてくれます。・このように奈良井宿は、避難・防災、コミュニティ活動、水資源の活用など、サスティナブルなまちづくりが実施されております。  (参考文献:奈良国立文化財研究所奈良井宿調査報告書)

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